2012年11月12日月曜日

ゴールドベルク・山根美代子著「20世紀の巨人-シモン・ゴールドベルク」

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まさに20世紀の巨人であったヴァイオリニスト、シモン・ゴールドベルク氏について、山根美代子先生が書かれた著書を紹介します。



シモン・ゴールドベルクの本:幻戯書房



この著書は、山根先生が急逝される直前まで執筆されていたものだそうです。音楽に携わる方だけでなく、すべての方に読んでいただきたい内容が詰まっていると思いますし、山根美代子先生という、深く鋭い真の知性と人間と音楽への純粋な慈愛に溢れる、稀有な女性の眼差しを通して、「日本語」という言語で、シモン・ゴールドベルク氏についての著書が出版されたということに、何とも不思議な「縁」のようなものを感じずにはおられません。



山根先生との出逢いは、ピアニストでも弦楽器専攻でもない私にとって、とある友達を通じての偶然で、しかも学部卒業後から留学中に急逝されるまで、僅か三年程度の間の交流でしたが、音楽家として、人間として、また女性として、私の「理想」を体現されているような存在であるだけでなく、競争や若さ故の間違った野心の渦巻く音楽学校という環境に揉まれる中で、音楽そのものに対する動機を見失いかけていた、当時まだあまりに未熟で弱い私に、西洋音楽が本来持っているやわらかさ、気高さ、やさしさ、怜悧さ、強さ、その無条件な価値の重さを感覚で教えてくださった、私にとって掛け替えのない恩人あり、今でも私に音楽への強い動機を与え続けてくださる存在です。



山根先生からご病気のことを(先生らしく、実にあっけらかんと)お電話いただいた時は大変驚いて気の利いたことは全く言えなかった記憶がありますが、その後レッスンに伺った時はとてもお元気そうでいらしたので、まさかあんなに早く亡くなられてしまうとは思っていませんでした。結局、その後は留学生活のドタバタで何通かのお手紙のやり取りを最後に、急逝のお知らせを友人からの電話で知りました。今思えば、一時帰国の時などでもきちんと連絡をして直接会いに伺えばよかった…と思うことがあります。



写真は山根先生と、ゴールドベルク氏。レッスン中は大変怜悧で時に辛辣な先生が、ゴールドベルク氏のことを話される時の愛情に溢れた少女のような表情を思い出します。